なぜ復刻版ビックリマンチョコは84円なのか?:景表法の景品類の価格規制について

2ちゃんまとめサイトより。http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1691144.html

ビックリマンチョコ」が復刻! 価格は当時の30円→84円で販売
1980年代に大ブームを巻き起こしたビックリマンチョコが復刻発売! 2月21日(火)に「ビックリマン伝説」(想定小売価格84円)として東日本で先行発売を開始する。

懐かしさ満点の人気菓子が帰ってきた!「ビックリマン伝説」のパッケージは当時の“悪魔VS天使”シリーズを思わせる2種類のデザイン。ターゲットは発売当時、ブームの中心にいた30代前後の男性だ。

変わらぬパッケージの一方で、シールの素材は豪華に進化。背景に浮き出し模様が入ったエンボス仕様で、より高級感のある仕上がりを目指した。シールのキャラクターは“悪魔VS天使”シリーズ第1弾のキャラクター37種に、新キャラクター3種をプラス。
懐かしいキャラたちが、より豪華になって登場する。

また、GREEmixiなどで配信されているゲーム「ビックリマン」とのコラボも。
商品に付いてくる二次元コードにアクセスすると、シールやアイテムが登場する仕組みだ。

2月に東日本で、4月24日(火)に全国発売を控える人気菓子の復刻版。
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たしかに子どもの頃、買っていた記憶がある。お菓子を捨ててシールだけ集めるほどはまってるのは自分やその周りにはいなかったと思うが。
この値上げは「景表法の規制?」と思ったので「お菓子+おまけ+景表法」で検索してみたところこちらのブログ(2007年のエントリで現在ブログは更新されていない)に説明がされていた。

そこで今回は景表法(不当景品類及び不当表示防止法)の景品類の価格規制について調べてみた(というほどでもないが)結果を。


まず景表法が何を定めているか。景表法は「おまけ(景品)が商品全体の何パーセントまでならいいか」を定めている。規制は景品(または懸賞)の種類ごとに違う。景表法における懸賞の種類には、一般懸賞と総付景品がある(他に共同懸賞があるか今回は無関係)。

1.一般懸賞の景品価格規制

一般懸賞の場合、景品の総額が商品売上全体の2%以内に規制される。ビックリマンの場合、シール(キラキラした高いのも普通の安いのも含めて)の総額が、チョコの売上全体の2%以内でなければならないということ。

懸賞による景品類の最高額及び総額の制限

懸賞に係る取引の価格 景品類制限額の(A)最高額 同(B)総額
5,000円未満 取引価格の20倍 懸賞に係る売上予定総額の2%
5,000円以上 10万円 懸賞に係る売上予定総額の2%
2.総付景品の価格規制

総付懸賞の場合、景品の価格が200円以内か商品価格の20%以内のどちらかだ。ビックリマンの場合、商品価格の20%以内となる。

懸賞に係る取引の価格 景品類制限額の(A)最高額 同(B)総額
1,000円未満 200円 規制なし
1,000円以上 取引価格の2/10 規制なし

表については茨城県生活環境部のサイトをもとにした。http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/seikan/seibun/seibun/seikatsu/keihyoho.htm (茨城県)


さて上記のブログによれば、従来、お菓子のおまけは総付懸賞とされていたが、景表法を管轄する公取委の解釈が変わり、おまけが色々あってどれが当たるか分からない場合は、一般懸賞とされるようになったそうだ。それによって従来は総付懸賞で最高200円までおまけにお金をかけられたが、今は2%なので30円の2%ではシールが作れず、シールを作るために84円という価格設定が必要だったのではないだろうか。
なお、消費者庁が設置されてから景表法は公取委から消費者庁に所管が移っている。


ちなみに上記のブログは、ペットボトルのキャップに付いているおまけ(ガンダムの例をあげている)が、買う前に外から見れて選べるようになったのは、景表法の解釈の変更が原因だと述べている。ビックリマンも外から見えるようにすれば、総付景品となるようだが、それはできないというロッテの判断なのだろう。

3.景品価格規制は妥当か?

景表法は消費者庁が所管する法であり消費者法の一つという性格がはっきりしたといえる。以前公取委が所管していたときには独禁法などと同じ経済法なのか消費者法なのかはっきりしないという面があった。
消費者法というのは、パターナリズムを正当化根拠としてリベラリズムの原則を修正する例外という位置づけができる。憲法民法、商法など日本の法律は基本的にリベラリズムに基づいている。よって、リベラリズムを修正する消費者法は特に民法の例外という位置づけのものが多い。
なぜ例外が認められるのか。それは消費者と企業の間には、資力・情報力・交渉力などの格差が構造的に存在するからだ。この構造的格差が消費者法が例外を定める正当化根拠になっている。
以上のように消費者法は例外であるので、抑制的であるべきだ。言い換えると、不必要な場合に、でしゃばって消費者法で規制すべきではないということだ。
本件でいえば、景品(おまけ)の価格規制が「でしゃばり」に当たるかどうかが問題となる。個人的には、ビックリマンシールやペットボトルフィギュアであれば、総付景品でいいのではないか。いいシールとダメなシールの間にそれほど価格差があるとは思えないためだ。

【追記】

上記1.と2.については、既に同じことを書いている記事があるようだ。
http://getnews.jp/archives/163159
重複してしまったので本エントリはあまり意味がなくなってしまったが、せっかく書いたのでそのままにしておく。

また上の記事には3.に当たるような記載は「先にソーシャルゲームを規制すべきじゃないか」という部分だけだが、法学にもとづく指摘にはなっていない。
一般人としての法学(の知識)の意義はこのような規制について妥当なのかどうなのか自分の頭で考える能力を身につけられることだろう。一般人がそのような能力を身につけ、妥当でないと思えば、それを政治に反映させて、規制(法律)を変えていくというのが、リベラルデモクラシー(民主主義)の建前だ。著作権法などについても同様のことがいえる。法学以外の例えば経済学についても同様のことがいえる。