イギリス暴動と幻想:根本的な原因は何か?

現実

まず、刑法の問題として犯罪であれば刑事手続にのっとって処罰するのが当然の前提だろう。あとは公共経済学でいう<貧困の罠>の一例という面もあるだろう。
このような問題なので、警察強化、社会保障制度改革が対応策として挙がるのは当然だろう。そして、このような対応策が現実的だろう。

抽象

ただ問題の根本的な解決は難しい。なぜなら、根本的な原因は<世界の無意味さ>が表面化したことにあると考えられるので。
なぜ<世界の無意味さ>が表面化したのか。
合理化・近代化により幻想が失われてきたため。
幻想は<世界の無意味さ>を覆い隠し<意味>を与えてきた。例えば、古くはキリスト教、前世紀はマルクス主義、身近には「いい学校、いい会社」といったもの。キリスト教の幻想を暴いたのがヘーゲルの影響を受けたニーチェだろう。キリスト教に代わる幻想を作り出したのが、やはりヘーゲルの影響を受けたマルクス
といっても最も身近な幻想は工業化社会における「いい学校、いい会社」という幻想だろう。現在の脱工業化社会ではこの幻想がなくなっている。これが現在の社会問題の多くの背景だと考えている。

抽象と現実

現実の対応策として教育の充実といったことが言われている。しかし、上記の抽象的な議論の立場からは効果が期待できない。
なぜなら、今の教育の根本的な問題は生徒の学習への動機づけの失敗だが、動機づけに失敗している原因も「いい学校、いい会社」という幻想の喪失だからだ。このあたりは佐藤学氏など教育学者としては一般的な理解だと思う。

道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫)

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「学び」から逃走する子どもたち (岩波ブックレット)

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