2011-01-01から1年間の記事一覧

八田達夫、高田眞『日本の農林水産業』

今回は本ブログで何度も参照した表記の本の読書メモを載せておきたい。以下の3つのエントリは本書の農業・林業・水産業の各章の内容に基づいたもの。各エントリの内容はこのメモのサブセットになっているが、文章自体は各エントリの方が分かりやすくしたつもり…

吉川洋『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』

昨日のエントリで紹介した本書の読書メモを載せておこうと思う。 吉川洋『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』(2009)ダイヤモンド社 ★★★★ 本書はダイヤモンド社の広報誌での連載を基にしたもの。タイトルどおり、ケインズとシュンペーターの比較を…

ケインズとシュンペーター

以前のエントリでケインズとガルブレイスは消費者主権という点で交錯するがそこはリベラリズムの難問ということを書いた。 今回はジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946)とヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(1883-1950)について両者はニーチェ的動機(シュ…

小松正之『日本の食卓から魚が消える日』

以前のエントリの続きとして、それとは別のエントリで参照した本書の読書メモを載せておく。 小松正之『日本の食卓から魚が消える日』(2010)日本経済新聞社 ★★★ 八田達夫、高田眞『日本の農林水産業』(読書メモ)で参考文献に挙げられていたので読んでみた…

ケインズとガルブレイス

今回はジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946)とジョン・ケネス・ガルブレイス(1908-2006)は消費者主権という点で交錯するが、そこはリベラリズムの難問だという話。 ガルブレイスの経済学は制度派経済学と言われるが、それ以前にケインジアン。ガルブレイ…

佐々木俊尚『ネットvs.リアルの衝突』

昨日のエントリでウィニーの金子勇氏の無罪確定という記事を取り上げた。今回はそれに関連してウィニー事件の経緯を描いた佐々木俊尚氏の本の読書メモを載せておこうと思う。タイトルから内容が見えないが本書の大部分はウィニー事件を扱っている。具体的な…

「ウィニー」開発者、無罪確定へ:幇助犯成立の基準は高裁と最高裁で同じなのか?

日経新聞より。 http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E0E2E2E0998DE0E2E3E0E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2 ファイル交換ソフトの「ウィニー」開発者、無罪確定へ 最高裁、検察側の上告棄却 2011/12/20 17:26 ファイル交換ソフト「ウィニー…

今敏『千年女優』

本レビューは数年前に書いたものだが、たまたま目に留まって読み返したところ、先日レビューを書いたティム・バートン『ビッグフィッシュ』(2003)と共通する主題を扱っていたので、載せておこうと思う。今から見るとヘンに感じる箇所もあるが、まあそれはそ…

「失われた20年」の原因は何か?:需要から考える

高度成長(1955〜70)の原因は内需拡大だった。例えば、自動車・家電(「三種の神器」)。 高度成長の終了後(70年代以降)は、需要が飽和し、成長は輸出主導となった。 しかし、プラザ合意(1985)で輸出主導は難しくなり、内需拡大が必要になった。 そこで道を誤っ…

マンガ家がネットの写真をトレース:フェア・ユースをどう考えるべきか?

現実 休載のお知らせ 2011年12月 7日更新連載作品『ダシマスター』において、一部の背景や料理、食材等の絵で、ウエブ上の写真画像に非常に類似したものがあることがわかりました。 事実関係を確認するため、第3号(12月21日発売)より当分の間休載させてい…

北朝鮮ベルヌ条約事件最高裁判決はおかしい:ダブルスタンダードになるので

産経新聞より*1。http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111208/trl11120819490021-n1.htm 北朝鮮の作品に著作権保護義務なし 最高裁判決*2 北朝鮮の映画を無断でニュース番組で使用され、著作権を侵害されたとして、北朝鮮の行政機関と日本の配給会社が日…

東電 実質国有化へ:賠償スキームと送発電分離案

毎日新聞より。http://mainichi.jp/select/biz/news/20111208k0000m020114000c.html 東電:実質国有化へ 政府、公的資本1兆円注入 政府は、東京電力に少なくとも総額1兆円規模の公的資本を注入する方向で調整に入った。福島第1原発の事故対応費用の増加な…

日経新聞「『すし』に異変、人気はサーモンへ マグロ後退」はヒドい

日経新聞より。 http://www.nikkei.com/life/gourmet/article/g=96958A90889DE1E5E2E6E7E1E3E2E2E4E3E0E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E6E2E4E0E2E3E2E4EAE6E4 老舗困った! 「すし」に異変、人気はサーモンへ マグロ後退 すしに異変――。マグロに代わってサー…

なぜ日本の漁業(水産業)はダメなのか?

日本の第一次産業シリーズ第3回。前回、前々回と八田達夫・高田眞『日本の農林水産業』(2010)(読書メモ)を基に日本の農業・林業の問題点について書いた。今回も同様に同書に基づき漁業の問題点について書いてみる。 ●日本の漁業の現状 日本は1972-1988年にかけ…

なぜ日本の林業はダメなのか?

前回は八田達夫・高田眞『日本の農林水産業』(2010)(読書メモ)を基に農業について書いた。今回も同様にこの本を基に林業について考えてみる。自分は林業について読んだ本はこれが初めて。まったく馴染みのない分野だったので新鮮で参考になった。日本の林業に…

なぜ日本の農業はダメなのか?

今回はこの問いについて八田達夫・高田眞『日本の農林水産業』(2010)(読書メモ)を基に考えてみる。この本には日本の農業・林業・漁業の問題点と解決策が書かれている。日本の農業・林業・漁業はどれもろくでもない状況に陥っているが3業種に共通の問題がある一方…

ティム・バートン『ビッグフィッシュ』

ティム・バートン『ビッグフィッシュ』(2003) アメリカ ★★★★★ 出演:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ジェシカ・ラング、ダニー・デビート、スティーブ・ブシェーミ、ヘレナ・ボナム・カータービッグ・フィッシュ コレクターズ・エディション [DV…

TPP著作物再販制度問題:アメリカ、公取委、新聞社らの立場

「TPPが著作物再販価格維持制度(独禁法23条4項)の廃止につながりそうだ」という話題がある(例えばこれ)。再販制度は新聞社らのレントシーキングの結果(利権)であり、彼らのダブルスタンダードっぷりが現れているので廃止にすべきだ。しかし本当に廃止になるの…

山田奨治『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』

最近著作権法と政治過程についてエントリを書くことが多かった。本書はまさにこのテーマについて書いている本であり、ぜひとも広く読まれるべき本だと思ったので、参考までに読書メモを載せておきたい。 山田奨治『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(…

グリーがモバゲーを提訴:法的根拠は何か、なぜ今のタイミングか、なぜKDDIが原告に加わっているのか

10月22日のエントリでグリーがDeNAを独禁法で提訴する法的根拠等について書いた(グリーがモバゲーに損害賠償を求め提訴へ:法的根拠は何か、なぜ今のタイミングか、賠償額はいくらか)。そのときの記事は「週明けにも提訴」とあったが、ずいぶん遅れて今日実際…

SOPAの問題点はアメリカ法の域外適用

SOPA(Stop Online Piracy Act)という法案が米下院にかかっており話題になっている(例えばこの記事とかこの記事)。「どんな法案?」と思ったのでとりあえずwikipediaを見てみた。今回はその内容を現時点の段階で紹介する。 1.wikipediaの内容 Title I of H.R. 3…

ロジャー・ミラー、ダニエル・ベンジャミン、ダグラス・ノース著、赤羽隆夫訳『経済学で現代社会を読む[改訂新版]』

以前のエントリで参照したという命題について述べた次の著書の読書メモを載せておく。 ロジャー・ミラー、ダニエル・ベンジャミン、ダグラス・ノース著、赤羽隆夫訳『経済学で現代社会を読む[改訂新版]』(2009)日本経済新聞社 ★★★★ 『制度・制度変化・経済…

一般用語の「二次創作」は著作権法上、何に当たるか?

答えとしては「複製物」「二次的著作物」「別個の著作物(原著作物)」のいずれかに当たる。前半ではこの点を解説したい。 以前のエントリである記事の誤りを指摘した。その誤りは「原著作者の許諾のない二次創作物が著作権侵害になるかはケース・バイ・ケース」という文…

TPP著作権問題:非親告罪化は警察のノルマ稼ぎ逮捕につながるおそれ

以前のエントリで紹介したシンポジウムの記事。ニコニコニュースより。 TPP参加でコスプレや二次創作が罪に問われる可能性 […]八谷和彦氏は、「(著作権法が)非親告罪化したら、警察が摘発の判断をすることになるのが怖い。"エロ"とかが入っているものは、…

日経新聞「TPP、知財でも日本に利点」は疑わしい

日経らしいというか何と言うか怪しい記事を見つけたので簡単に書いておく。 http://www.nikkei.com/news/article/g=96958A9C889DE1E4E1E0E1E1E6E2E2EAE3E3E0E2E3E39797E0E2E2E2;m=96948D99939C80979C8D9E9B9C99 TPP、知財でも日本に利点 論点Q&A […] …

TPP問題:「広く弱い利害」をもつ集団から「狭く強い利害」をもつ集団に利益が移転される

TPPについての議論が盛んだが、条約の内容がハッキリしないのでよく分からない。具体的にはよく分からないので、今回は一般的に問題を見る視点として役に立つ命題を紹介したい。 それは政治的決定によって「広く弱い利害」をもつ集団から「狭く強い利害」を…

フランス著作権法の二次創作規定とは何か?韓国のフェアユース規定は米韓FTAの帰結か?

1.フランス著作権法の二次創作規定とは何か? ニコ生『TPPはネットと著作権をどう変えようとしているのか!?』のまとめを見ていたら、福井健策氏(弁護士)が次のようにつぶやいていた。 日本はフランスのような二次創作規定も、米国のようなフェアユースも(…

国際収支統計における日本の著作権収入はいくらか?(1996年から2010年)

共同通信より。http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011110301000346.html 米の著作権収入72兆円超 業界団体「経済成長の鍵」 【ワシントン共同】昨年1年間に米国の映画、音楽、コンピューターソフトなどが生み出した著作権収入が計9318億ドル(約72…

違法同人DLサイトを擁護するのに使える著作権法の学説

前々回、前回に続き「不適法な二次的著作物の複製は侵害か?」という問いについて。 1.問いへの答え この問いの答えは現時点では「二次的著作物*1はたとえ不適法であっても(1)著作権が発生し、かつ、(2)その権利行使ができる」となりそうだ。 根拠となる学説につ…

文教堂が同人誌販売開始:承諾なき二次創作は侵害

以下の記事の間違いを指摘しておきたい。 「文教堂が同人誌販売開始 著作権問題に注目集まる」 http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/jikenbo_detail/?id=20111031-00021890-r25 首都圏を中心に展開する大手新刊書店チェーン・文教堂が、アニメ・コミック専門店「ア…