各府省連絡会議と事務次官等会議:閣議の事前審査になるかが問題

毎日新聞より。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110907k0000m010084000c.html

野田政権:府省連絡会議を強化…首相、事務次官に協力要請
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 野田佳彦首相は6日、事務次官が出席する各府省連絡会議の機能強化を決めた。これまでは東日本大震災の対応に限定してきたが、政策全般についての調整を行うようにする。開催ペースも週1回の定例にする予定で、首相が掲げる「政と官の緊密な意思疎通による真の政治主導の確立」を目指す。民主党政権は政治主導を掲げ事務次官会議を廃止したが、野田政権では官僚との融和が進みそうだ。
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 民主党政権交代直後の09年9月、官僚支配の象徴とされた「事務次官会議」を廃止した。「閣議の事前承認機関と化し、政治主導に反する」(民主党)と判断したためだった。
 だが、東日本大震災の対応で省庁間の連携がスムーズにいかず、行き過ぎた政治主導が露呈。3月22日に仙谷由人官房副長官(当時)が「各府省連絡会議」として復活させた。菅政権では1〜2週間に1回のペースで開いてきたが、官房長官の出席はまちまちだった。
 野田政権は基本的に定例化し週1回開く。大震災対応以外の省庁間調整にも活用するが、事務次官会議と一線を画すために政治家も出席する。【小山由宇】
 ◇事務次官会議◇
 各府省の事務次官警察庁長官金融庁長官、内閣法制次長が定例閣議前日にあたる毎週月、木曜日、首相官邸に集まって開かれていた会議。内閣制度ができた翌年の1886(明治19)年から民主党政権が誕生した2009年まで、123年間続いた。官僚出身の官房副長官が取り仕切り、翌日の閣議にかける案件を事前審査する役割を担った。法的根拠はないが、全会一致できない案件は閣議に上げないことが慣例になっていた
毎日新聞 2011年9月6日 21時18分(最終更新 9月6日 23時10分)

以前のエントリで読売新聞の記事をもとに政調会による事前審査の復活について書いたが、今度は事務次官等会議の復活の話。菅内閣の時点で復活していたが、野田内閣でも継続ということ。
前回の読売新聞は良い記事と評価できるものだったが、今回の毎日新聞の記事はいただけない。なぜなら、事務次官等会議の本質である閣議の事前審査が復活した事務次官等会議(各府省連絡会議)で行われているのかどうか分からないため。
なぜ閣議の事前審査が本質かというと、事前審査は政府の意思決定を制約する与えるため。現代の政治学(新制度論)では政治制度を<政治アクターの行動を制約するルールの集合>と考える。この定義から考えれば、事務次官等会議という政治制度の本質は閣議の事前審査であると分かる。
また、この官僚(事務次官)による閣議の事前審査が日本の政治過程の問題である官僚内閣制(本記事では官僚支配とある)の一因になっていたことは容易に分かるだろう。
なぜ官僚内閣制が日本の政治過程の問題なのか。それについては以前のエントリで書いた。
以上から、今後この各府省連絡会議が閣議の事前審査機関になるのかが問題だ。

比較政治制度論 (有斐閣アルマ)

比較政治制度論 (有斐閣アルマ)