違法動画アップロードコミュニティ:なぜ二重規範のあるコミュニティが生まれるのか?
2ちゃんまとめサイトより。http://blog.livedoor.jp/insidears/archives/52495264.html
今回は結論は無いが興味深い問題なので取り上げておきたい。
動画共有サイトにおけるアニメをアップロードする際の「慣習・しきたり」にワロタwwwwww
アニメーション作品をアップロード、会社員男性を逮捕
奈良県警生活安全企画課、西和署、富山県警生活環境課、小矢部署の合同捜査本部は、平成23年9月28日、アニメーション作品を権利者に無断でアップロードし送信できる状態にしていた、奈良県北葛城郡の会社員男性(20歳)を、著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕しました。
男性は、平成23年4月26日ころ、(株)講談社が著作権を有するアニメーション作品「みなみけ」第1話「南さんちの三姉妹」の動画ファイルを自宅のパソコンからインターネットを通じてオンラインストレージサイト「Petite Soeur」に蔵置し、動画投稿サイト「ひまわり動画」を通じて不特定多数のインターネットユーザーに対して送信できるようにし、著作権(公衆送信権)を侵害した疑いが持たれています。
http://www2.accsjp.or.jp/criminal/2011/1154.php
726 :名無しさん@涙目です。(千葉県):2011/09/28(水) 18:43:54.33 id:lfEXwn+B0
おいこいつの担当どうすんだよ
誰が引き継ぐんだ
◆逮捕された人の来期アニメ担当予定---------来期登録予定---------
■「Fate/Zero」 1280×720 200MB
■「C3(シーキューブ)」 1280×720 200MB
■「ギルティクラウン」 1280×720 200MB
■「マケン姫っ!」 1280×720 200MB
912 :名無しさん@涙目です。(長野県):2011/09/28(水) 19:03:20.92 id:M1UgnPCB0
なんで勝手に上げると怒られるかっていうとうpするやつは担当する番組で格付けされてんのよ
話題作上げてる奴は再生数もコメントも上位に来るからマイページに感謝コメントがたくさん付く
それを励みにやってるわけ
この逮捕された奴は今まで量産萌えアニメ担当だったんだけど長年の功績を評価されてFateやギルクラみたいな話題作を任されるようになった矢先の逮捕だからな
さぞ無念であろう
最近だとまどか☆マギカの担当は注目度の低さから新人に任されてたんだけどあまりの出世ぶりに老害が嫉妬して担当を奪い取ったパターンがあったな
620 :名無しさん@涙目です。(長野県):2011/09/28(水) 18:30:58.75 id:M1UgnPCB0
クズすぎる……
【逮捕前】
・完走お疲れ様です。最新の12話だけ再していただけると大変うれしいのですが…
・恋姫完走お疲れ様&ありがとうございます。これからも応援してますので体調とかにも気をつけて頑張ってくださいね(〃∇〃)
・がんばって下さい!応援してます!
・恋姫シリーズ完走ありがとうございました。よろしければメイト登録お願いします。
【逮捕後】
・逮捕おめでとうございます!
・逮捕おめ!!
・ざまあwwwwwwwww
726のように違法動画のアップロードに担当が決まっているのも驚きだが、912のように昇進システムがあるところがさらに驚き。2ちゃんでは「ムラ社会」「法律より習慣」と指摘されていた。
620は逮捕前後のコメント。2ちゃんでは「手のひら返し」と指摘されていた。
1.なぜこのスレが興味深いのか
自生的秩序という点と二重規範という点が表れているため。自生的秩序とはハイエクの議論した概念で自然に成り立つ秩序ということだが、二重規範とは小室直樹氏の指摘していた問題で<共同体内部と外部で規範が異なること>。違法アップロードコミュニティには明らかに外部規範(法律)とは異なる内部規範(慣習)がある。その二重規範が自然に成り立っているので興味深い。
2.なぜ二重規範が重要か
二重規範のある共同体は「日本社会がまだ近代社会ではないのでは?」という疑問につながるためだ。なぜなら二重規範は前近代社会(ムラ社会)の特徴だから。例えば『ヴェニスの商人』をみても分かるようにユダヤ人の共同体は内部と外部で規範が異なる。ユダヤ人同士では利子はとってはいけないが、ユダヤ人以外の相手からは利子をとってもよい。一方、このような二重規範を解消し規範を統一した社会が近代社会。統一された規範の主なものが法。本件では著作権法。
近代社会(近代法のある社会)において二重規範のある共同体は社会の規範(法)と不一致を起こし問題になる。例えば、コンプライアンス騒動の頃の企業不祥事(例えば、雪印)。不祥事を起こした企業内の規範が社会の規範とズレていた。本件でもまさに共同体の慣習と法律の不一致が問題化した。本件での不一致は評判で動くネットコミュニティとカネ(著作権)で動く社会というネットにおける重要な不一致だと思われる。
3.なぜ二重規範のある共同体が生まれるのか
以上から<なぜ二重規範のある共同体が生まれるのか>というのは興味深い問いといえる。小室氏の答えは<戦後、日本人は官僚組織や会社という機能集団に全人格的に帰属したため、自分の規範を会社の規範に同一化させた>というもの(例えば小室直樹『危機の構造』(1976))。
別の答えとして社会心理学者の山岸俊男氏(北大)の<人の行動に戦略的補完性があるためナッシュ均衡として自然に成り立つ>という議論がある(例えば山岸俊男『心でっかちな日本人』(2002))。簡単に言うと<みんなが互いの行動を見ながらトクする行動を選択した結果として今の状況がある>ということ。詳しくは本に書いてあるが、戦後の"日本的経営"の説明としては、こちらの方が説得力がある。
本件の説明としても小室氏のいう<全人格的に帰属>では説得力不足に感じる。では山岸氏の議論はどうか。小室氏の説明よりは当てはまりそうだが、すぐにはピンと来ない。山岸氏の議論をこの件に当てはめると<アップロードする側はいい動画をアップロードするほど評判が得られ(褒められ)、ますますアップロードするようになるし、アップロードしてもらう側もコメントで褒めるほど、ますますアップロードしてもらえるので褒める。だからこのような二重規範になった。逮捕されるともう褒めてもトクじゃないので褒めなくなる(手のひら返し)>という説明になる。これだけで二重規範の説明になっているだろうか?エリック・レイモンドのいう「バザール」と何か違うだろうか?
3.手のひら返し
「手のひら返し」と二重規範の関係についてはダブルスタンダードの問題として以前から取り上げているものだ(例えば、未成年飲酒についての過去のエントリ)。ただ本件の手のひら返しは自分が以前から説明している手のひら返しとは違う。自分が説明していたのは<適用する基準を都合よく切り替えること>なので。
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