フジテレビ 外国人による株式保有:放送法について

デモの影響なのかフジテレビが「皆様へ」というプレスリリースを出している。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/company/news/110902.html
この中で放送法に関する部分について調べた内容を記しておく。フジテレビは次のように言っている。

認定放送持株会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)は、放送法により、外国人株主の議決権比率が20%未満であることが定められています。
この制限は、議決権保有が確定していない<株式保有者の比率制限>ではなく<議決権を有する株主の比率制限>です。FMHは<株式保有者>の中から、議決権を有する<株主>として認めるための株主名簿確定作業を行う際に、外国人の<株式保有者>が20%以上であった場合は、その超過分について議決権を有する<株主>への登録を拒否することが法律で認められています。従って<議決権を有する外国人株主比率>は法律に則り常に20%未満で抑えられており、「放送法違反」に該当することはございません。

なお、証券保管振替機構により日々開示されているFMHの外国人保有比率は、特に外国人の保有比率が20%以上であった場合、株式を保有しても<議決権を有する株主(株主総会へ出席することや経営への意思を表明する権利を有する株主)>にはなれない可能性があることを外国人に注意喚起するためのものです。

ただし、議決権を持たなくても、売買差益及び配当を目的として株式を保有することは自由であり、法的な制限は加えられておりません。なお、日本の上場会社における外国人株式保有比率は2010年度で26.7%であり、FMHの外国人株式保有比率は平均的な水準です。

「株主名簿確定作業を行う際に、外国人の<株式保有者>が20%以上であった場合は、その超過分について議決権を有する<株主>への登録を拒否することが法律で認められています」とあるが、何法の何条で認められているのか。
法律はやはり放送法だ。放送法の中にはいくつか株主名簿への記載拒否を定めた規定があるが、問題となっているフジ・メディア・ホールディングス認定放送持株会社なので次の161条が適用される*1

第百六十一条  金融商品取引所に上場されている株式又はこれに準ずるものとして総務省令で定める株式を発行している認定放送持株会社は、その株式を取得した外国人等(第百五十九条第二項第五号イ(1)から(3)までに掲げる者又は同号ロ(2)に掲げる者をいう。)からその氏名及び住所を株主名簿に記載し、又は記録することの請求を受けた場合において、その請求に応ずることにより同号イ又はロに定める株式会社に該当することとなるときは、その氏名及び住所を株主名簿に記載し、又は記録することを拒むことができる

よって、フジテレビのプレスリリースどおりだ。フジテレビは外国人株主に対し一方的に株主名簿記載を拒否できるようだ
どんな時に拒否できるのか。「同号イ又はロに[…]該当することとなるとき」だ。
「同号イ又はロ」とは「第百五十九条第二項第五号イ又はロ」のことなので、そこを見てみると。

第百五十九条
[…]
五  申請対象会社が、次のイからヌまでのいずれにも該当しないこと。
イ (1)若しくは(2)に掲げる者が業務を執行する役員である株式会社又は(1)から(3)までに掲げる者がその議決権の五分の一以上を占める株式会社
(1) 日本の国籍を有しない人
(2) 外国政府又はその代表者
(3) 外国の法人又は団体
ロ (1)に掲げる者により直接に占められる議決権の割合とこれらの者により(2)に掲げる者を通じて間接に占められる議決権の割合として総務省令で定める割合とを合計した割合がその議決権の五分の一以上を占める株式会社(イに該当する場合を除く。)
(1) イ(1)から(3)までに掲げる者
(2) (1)に掲げる者により直接に占められる議決権の割合が総務省令で定める割合以上である法人又は団体

イは、外国の会社等が議決権のある株式を20%保有するという条件だ。ロは外国の会社等とその外国会社を所有する会社が議決権のある株式を20%保有するという条件だ(省令の上限があるようだ)。

*1:ちなみに認定放送持株会社は次のように定義されている。「第百六十条  前条第一項の認定を受けた会社又は認定を受けて設立された会社(以下「認定放送持株会社」という。[…]」「第百五十九条  二以上の基幹放送事業者[…]をその子会社とし、若しくはしようとする会社又は二以上の基幹放送事業者をその子会社とする会社を設立しようとする者は、総務大臣の認定を受けることができる。」