法と実態の乖離としての政府・与党二元体制
以前のエントリで政府・与党二元体制が復活しつつあるということを書いた。また、以前から、法と実態の乖離の問題を指摘している(例えばパチンコや体罰)。今回は政府・与党二元体制も法と実態の乖離の一つであるということについて。
タテマエでは、すなわち法的には、与党(政党)は私的な存在である。これは法人としての政党を規制する政党法人格付与法は一般社団・財団法人法を準用していることからも分かる。
一方、ホンネでは、すなわち実態としては、与党(政党)は<首相を選ぶ>、<政調会において法案の事前審査を行う(政府・与党二元体制)>といった国政の中心的役割を担う(これを政党政治と呼ぶ)。
よって、私的な存在が国政の中心的役割を担うのだから、これは法と実態の乖離だ。この乖離から次のような問題が生じる。政治学者の山口二郎氏(北大)は『内閣制度』(2007)で次のように述べている。
政策的な利益を得たい私人が自民党の政治家に対して金品を提供した場合、国会議員は特別職国家公務員であっても、党としての行動は私的自治の範疇であるから、刑法における公務員の涜[原文は旧字体]職規定には抵触しない。ちょうど、実質的な総理大臣を選ぶ選挙である自民党総裁選で、どれだけ金が動いても刑法で言う贈収賄には当たらないのと同様である。ここに、合法的な腐敗の原因がある。(p.87)
以前のエントリに書いた「政府・与党二元体制の復活で利権に群がる議員が出てくる」というのにはこのような背景がある。
山口氏は政治資金規正法についてはふれていない。自分は政治資金規正法については詳しく知らないが政党への献金は規制されていないだろう。
これに関連して、飯尾潤氏(政策大学院大)も政府・与党二元体制について次のように問題を指摘している(『日本の統治構造』(2007))。
与党組織は、あくまで非公式な組織であって、法的主体ではない。そこにおける活動は非公開性が強く、責任の所在は明確でない。このように法的責任が内閣にありながら、与党機関に実質的な決定権がある場合、与党側は都合のいい政策をつまみ食いすることが可能になる。(p.104)
問題への対策としては、当然ながら、政党を公的な存在として規制する立法を整備することだろう。政治家が自らを規制する立法なので実現は難しいが。
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