堀江貴文、成毛眞『儲けたいなら科学なんじゃないの?』

2011年に出版された本を紹介する20冊目。今回も19冊目堀江貴文、茂木健一郎『嫌われ者の流儀』に続いてホリエモン。私が堀江氏の本のどこに読む価値を見出しているかについてはこのエントリを参照。そこで堀江氏の特徴の一つに過剰な合理主義を挙げた。科学はその合理主義の最たるものだ。だから堀江氏が科学好きなのは私から見れば当然といえる。

儲けたいなら科学なんじゃないの?

儲けたいなら科学なんじゃないの?

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堀江貴文成毛眞『儲けたいなら科学なんじゃないの?』(2011)朝日新聞社 ★★★

いつもの堀江貴文氏。成毛眞氏は元マイクロソフトジャパン社長。よく名前は目にするが本を読むのは初めてだった。科学についての対談ということで『ホリエモン宇宙論』に近い内容なんじゃないかと思って読んでみた。珍しく期待通り堀江氏の宇宙ビジネスの話が多かった。ただ、対談なので特にどうということはないが。


本書の大まかな構成は第1・2章が堀江氏の宇宙ビジネス、第3章が二人に共通のIT(+自動車)、第4・5章がバイオ・医療、第6章がエネルギー・農業、第7章が総論的な話。
第1〜3章はまだついて行くことができたが、バイオ・医療・農業などになると知らない話がどんどん出てきた。二人とも「それなりに詳しいんだな」と感心した。佐藤学氏(東京大)が「日本の成人の科学的関心は先進国の中で最低レベルだ」という話をしていたが(佐藤学『学力を問い直す』(2001))、自分もそのうちの一人か、と反省。まえがきで成毛氏がまさにこのような点に言及している。


本書はタイトルが示すように文系出身の経営者2人が科学について語る点に特徴があるだろう。事業化を想定した素人による科学談義ということ。この点はいいと思う。また上記のような刺激を受けたという点もあり、対談にしてはよかった。評価としては、最近読んだ対談本と比べて毛利子来橋本治『子どもが子どもだったころ』(1998)には負けるが、内田樹三砂ちづる『身体知』(2006)よりは上というところ。


以下、内容のメモ。


堀江 小山宙哉宇宙兄弟で描かれているように宇宙飛行士はすごく意味のない訓練・競争をしている。ありえないような困難な状況を作り出し「宇宙飛行士はこんな困難でも乗り越えられるほど優秀だ」というプロパガンダをするため。
宇宙兄弟』は読んだことがあるが、まさに宇宙飛行士の選抜・訓練・ミッションの困難さをアピールしまくる内容。


堀江氏は宇宙ビジネスが盛んになるように、インフラ作りとして安価なロケットをつくっているという。

堀江 要は安いプラットフォームを作って、いろいろな人たちの多様な知識に頼るべきだと思うんですよ。(p.69)

プラットフォームは近年の経営学ではとても重視されるところ。

【参照文献】※成毛氏推薦の科学読み物

リチャード・P・ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん』 ※有名な本。すべての「科学読み物の母」とのこと
大河内直彦『チェンジング・ブルー』 ※日本人による科学読み物の史上最高傑作とのこと