堀江貴文『成金』

2011年に出版された本を紹介する21冊目。今回も20冊目堀江貴文、成毛眞『儲けたいなら科学なんじゃないの?』に続いてホリエモン。私が堀江氏の本のどこに読む価値を見出しているかについてはこのエントリを参照。

成金

成金

堀江貴文『成金』(2011)徳間書店 ★★★

堀江貴文氏の小説第二段。『拝金』(2010)の続編。といっても小説の舞台は時間が遡って、堀江氏をモデルにした主人公「オッサン」の過去が描かれている。
内容は光通信にオンザエッジがのっとられ、若き日のオッサンが光通信に復讐するが、実はSBIが黒幕であり戦いに敗れるという話(本書では光通信→Light通信のようにすぐ分かるよう改変してある)。
そして話の最後にSBIが今度はフジテレビをのっとろうとしていることが分かり、オッサンはそれを利用して復讐しようと決意する場面で終る。このフジテレビ以降の話が『拝金』。


読んだ印象としては前作に比べ「ちゃんとしている」。ちゃんと『拝金』につながっているし、文章も『拝金』に比べ、ちゃんとしている。ただ普通の経済小説を書いてもプロの小説家には勝てないんだよな、という問題が。


堀江氏は『君がオヤジになる前に』(2010)という本でこう語っていた。

『拝金』には実用書に負けない、役立つ情報を詰め込んだ。「ディテールが甘いとか、こんな描写の薄いものは小説じゃないとか、厳しい書評もあったけど、細かいディテールや描写の掘り下げに、何の意味があるのだろう?」(p.38)

確かに『拝金』は情報を伝える小説のようだった。堀江氏の体験談を小説にして「読者に追体験してもらう」目的だったという(『拝金』あとがき)。
それに比べて、本書は「意味がない」と言っていたディテールや描写を頑張った分、普通の経済小説になってしまった。つまり堀江氏の経験を追体験させるという点が弱い。結局、小説としては上達したが、堀江氏らしさがなくなり、評価は前作とプラマイゼロというところ。