堀江貴文『収監』
2011年に出版された本を紹介する19冊目。今回も18冊目堀江貴文、茂木健一郎『嫌われ者の流儀』に続いてホリエモン。私が堀江氏の本のどこに読む価値を見出しているかについてはこのエントリを参照。そこで書いたことだが、本書の中で堀江氏は「なぜ国から痛めつけられて犯罪者にされている今でも国に改革を訴えるのか?」と問われ「おせっかい」と答えている。この箇所は<全体性へのつながり>という堀江氏の本を読む価値を表していると考えている。
- 作者: 堀江貴文
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/06/07
- メディア: 単行本
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堀江貴文『収監』(2011)朝日新聞社 ★★
いつもの堀江貴文氏。新刊が出ていたので。収監前に準備して収監後に出版される新刊が7冊も予定されているそうだ。『嫌われ者の流儀』もその一冊だったのだろう。本書は週刊朝日での連載をもとにしている。
タイトルは「収監」となっているが、内容は全然関係がない。副題に「近未来」とあるが、堀江氏が近未来を予想するという趣旨だったようだ。ただ、ほとんど予想になっていない。
- 現状を述べただけのもの。例えば、検察批判やテレビ局批判。
- 既に予想されているもの。例えば、ノマドが広まるだろうとか。
- 「大きな変化が起こるだろう」といった無内容なもの。例えば、著作権についてCC(クリエイティブ・コモンズ)などが広まり変化するだろうと書いているが無内容。
テーマは検察、テレビなどマスコミ、宇宙など広い。マスコミがもっとも分量が多いか。あと政治も多い。政治については特に、知識がないのに無理やり書いている感がある。
●政治
アメリカの連邦最高裁は保守とリベラル半数ずつに中道1人とバランスを取るようにしている。それに対し、日本の最高裁は保守ばかり。
何を言っているんだ。アメリカ憲法史を何も知らないようだ。
シンガポールは一党独裁だ。しかし「自由主義社会の一員として[・・・]」(p.139)。
シンガポールが自由主義国とは。自由主義という政治学の根本的な概念が分かってないんだろうか。
●検察、マスコミ、宇宙
検察批判は郷原信郎氏・三井環氏の本で読んだ。
テレビ局批判は池田信夫氏の本で読んだ。
宇宙については、自分のやっているビジネスの話だけ。『ホリエモンの宇宙論』のようなまともな話はない。
以下の予想も他の本で読んだものと全く同じ。
グローバル化にともない労働市場は流動化するだろう。トーマス・フリードマン『フラット化する世界』(2005)そのまま。
「ノマド」型ワークスタイルが広まるだろう。佐々木俊尚『仕事するのにオフィスはいらない』(2009)そのまま。
まあ、これらの知識自体は知ってていい話なので、何も知らない人が読む分にはいいかもしれない。
【対談】
巻末に上告棄却後に行われた東浩紀氏との対談が付されている。まあ、中身がない。一つだけ気になったのは次のやり取り。
東 ひとつ根本的な疑問があります。堀江さんは日本と言う国に痛めつけられて、不当に犯罪者の烙印まで押されたと考えている。それなのにいまだに「日本を改革したい」と発信し続けていうのはなぜなんですか?
堀江 おせっかいです。(p.204)
これはいい質問。
【その他】
●icezuki事件
逮捕の必要はなかった。ISPに問い合わせれば不正を行った学生を特定するのは容易、また証拠隠滅も出来ないから。これはまったく賛成。
【関連エントリ】
- 堀江貴文『0311再起動』
- 堀江貴文『お金はいつも正しい』
- 堀江貴文、茂木健一郎『嫌われ者の流儀』
- 堀江貴文、成毛眞『儲けたいなら科学なんじゃないの?』
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- 堀江貴文、上杉隆『だからテレビに嫌われる』
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- 作者: 堀江貴文,茂木健一郎
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- 作者: トーマスフリードマン,伏見威蕃
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