若者の「結婚離れ」・・・2011年婚姻数、戦後最低:「若者の○○離れ」の本質は何か?
2ちゃんまとめサイトより。http://alfalfalfa.com/archives/5148730.html
元記事はJ-CAST。http://www.j-cast.com/2012/02/01120502.html
若者の「結婚離れ」・・・2011年婚姻数、戦後最低
2011年は「震災で『絆』が深まり、結婚する人が増える」などと指摘された年だった。だが、蓋を開けてみると、1年を通しての婚姻件数は戦後最低。「結婚離れ」には歯止めがかからないのが実情だ。その理由はどこにあるのか。
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高まったはずの「結婚機運」は、実際の結婚には結びつかなかったようで、11年の婚姻件数は前年比4.3%減の67万件の見通しだ。
婚姻件数は1970年代前半の約100万件をピークに減少を続けており、87年の69万6000件を底に、70万台で推移してきた。今回の67万件という数字は、戦後最低となる見通しだ。
[・・・]少子化で、「そもそも、結婚適齢期の人口が減っている」ことが背景にあるとみられている。また、国立社会保障・人口問題研究所が10年6月に行った「出生動向基本調査」によると、18歳以上35歳未満の未婚者のうち、「一生結婚するつもりはない」と回答した男性が05年の前回調査比2.3ポイント増の9.4%、女性は1.2ポイント増の6.8%にのぼっている。未婚者の「終身独身志向」が高まっていることも背景にありそうだ。
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「若者の結婚離れ」が進んでいるという記事。
今回は「若者の○○離れ」について<意味と強度>という視点から考えてみる。例えば、テレビ離れ、クルマ離れ、活字離れ、理系離れ、恋愛離れ*1。そもそも、これら「若者の○○離れ」はメディアの問題で実態を反映していないともいえる。ただ、今回は<意味と強度>という視点からはどう考えられるかを試みるものである。
すべての「若者の○○離れ」を一つの視点から説明できるとは思えない。ただ、<意味と強度>という視点からは「○○があれば、…で楽しい」という日本の社会で共有され(押し付けられてきた)幻想から若者が解放されていることだといえる。このような幻想は若者より上の世代が囚われていたものだ。だから彼らには若者が「離れ」ているように見えるのだろう。
なぜこのような幻想が社会で共有され、押し付けられるのか。社会のメンバーの行動の相互作用によって自生的に生じた幻想もあるだろう。この例としてよく出てくるのが貨幣だが、今回は措いておく。
一方、あるメンバーが自己の利益を測って押し付けた幻想もあるだろう。この例はマーケティングだ。バレンタインデーを作った製菓業界(モロゾフ説とかメリー説とかがあるようだ)の例が分かりやすいだろう。「男の子にチョコをあげる→喜ばれる→告白→付き合う→楽しい」という幻想を女の子に押し付けたといえる。また例えば、デビアスの婚約指輪としてのダイヤモンドリングというのも分かりやすい。また例えば、電通がテレビドラマなどを通じて行ってきたことだ。若者のテレビ離れ、若者のクルマ離れなどはこのような幻想からの解放と言える。
このブログではこれまで幻想が消滅した原因は脱工業化にあるとしてきた。それは以下の3つの含意があると思われる。
- 工業化(日本の場合、高度成長)が終わり、必要な消費財が一通り手に入るようになったこと。よって、その消費財が手に入れたくてたまらないという状態になりにくい。例えば、クルマも高級車は必要ない。軽自動車でいいとか。テレビも買おうと思えば買えるけど、ネットとスマホがあれば要らないとか
- 1.とは反対に高度成長が終わり、可処分所得が減る又は増えないという予想があること。例えば、高い維持費を払ってクルマをもつのはムダとか。
- 脱工業化にともなう情報化。例えば、電通のマーケティングについての情報がインターネットで手に入るようになれば、「そんな汚いマーケティングにはのせられない」と考えるようになる人が出てくる。実際に2ちゃんなどでは電通は忌み嫌われている。またインターネットで「○○をした」人の体験談が手に入れやすくなり、その分、幻想から醒めやすくなっているともいえる。このような状況を指して宮台真司氏はインターネットは"幻滅のメディア"だと表現した(『中学生からの愛の授業』(2010))。
一方で「○○をした」人の体験談がネットユーザに<意味>を与え、行動の選択に影響を与えることもあるだろう。2ちゃんのまとめサイトでよく見かける。これは消費者がそれぞれ自分の物語をつくりながら消費をすることだ。このような物語消費は、大塚英志氏など多くの論者により主張されている。例えば、山田昌弘『幸福の方程式』(2009)。更に、現在ではネットのソーシャルメディア上で物語がつくられ消費が行われるという主張も多くの論者によりなされている。例えば、西垣通『IT革命』(2001)はソーシャルメディア以前に同様のことを指摘している。ソーシャルメディアを例に主張しているのは、例えばタイラー・コーエン『フレーミング』(2009)、佐々木俊尚『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』(2010)、同『キュレーションの時代』(2011))。
以上のように、<意味と強度>という視点からは、脱工業化を背景とする幻想からの解放が「若者の○○離れ」の本質といえる。そして社会に共有され(押し付けられる)幻想による消費から各ネットユーザがそれぞれつくる物語に基づいて消費へ変化しつつあると思われる。幻想も物語も<意味>であるがその出所が異なるということだ。
なお、個々の「若者の○○離れ」には以下のような意見がある。
- 「若者の活字離れ」については、橋本治氏が「大人が若者に『活字離れ』といったレッテルを貼り、啓蒙を放棄したためだ」述べている(『浮上せよと活字は言う』(1994))。
【関連エントリ】
- 「失われた20年」の原因は何か?:需要から考える ※高度成長期と現在のネットが消費に与える影響について
- ケインズとガルブレイス ※マーケティング(企業が幻想を作り出すこと)とリベラリズムの関係について
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