特許調査サービスのクラウドソーシングが登場:クラウドソースとは何か?

テッククランチより。
http://jp.techcrunch.com/archives/20120323ip-research-platform-crowdipr-secures-135000-goes-freemium/

専門法律事務所とどっちが優秀?安い?–エストニアにオンライン知財調査サービスが誕生
エストニア生まれのCrowdIPRは、知財(intellectual property, IR)に関する調査(research, R)をクラウド(crowd)ソースで行うサービスだ。Crowd + IP + RでCrowdIPR。同社がこのほど、イギリスのNorthstar VenturesとIP Groupから13万5000ドルの資金を調達した。

このプラットホームはいわば、“知財調査のための集団頭脳”で、世界中のテクノロジと知財関連の専門家450名の協力により、知財に関する顧客が求める調査を行う。これまで、イギリスとエストニアとロシアの大学や企業のために、20件の調査プロジェクトを完了した。

協同ファウンダでCEOのTaavi Raidmaによれば、今日(米国時間3/23)からはベーシックな知財調査を無料で提供する。より詳しい調査項目は、従来どおり有料だ。

CrowdIPRはまた、ロンドンのImperial College Business Schoolの特任教授で前はNokiaに在籍したDonal O’Connellを、アドバイザーとして招聘した。

Nokiaでは彼は、R&DとIP担当の副社長だった。

CrowdIPRは2011年10月に非公開ベータに入り、これまでのところ25件の知財調査をクラウドソース方式により実行している。分野は、化学、物質科学、IT、エネルギーなどだ。クライアントはイギリスとエストニアとロシアからで、主なターゲットがテクノロジ企業と大学だが、今後は特許事務所や投資会社も顧客にしていきたいと考えている。

1.クラウドソースとは何か?

クラウドソース」*1方式により特許調査サービスを提供するエストニアのスタートアップ企業がベンチャーキャピタルから資金を得たという記事。「クラウドソース」は普通はクラウドソーシング(crowdsourcing)と呼ぶのが一般的だろう。記事の内容を一言でいいかえれば、特許調査サービスのクラウドソーシングが出できたということ。クラウドソーシングとは多数のネットユーザ(crowd)の作業をクラウド(cloud)上に集めてサービスを提供することだろう。cloudとcrowdの掛け言葉になっている。wikipediaは次のように説明する。

従来、アウトソーシングという形で企業などが、外部に専門性の高い業務を外注するというトレンドがあった。しかし、昨今では、インターネットの普及により社外の「不特定多数」の人にそのような業務を外注するというケースが増えている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%89%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0

クラウドソーシングの有名な例はアマゾンの「Amazon Mechanical Turk」だろう。また個人的には日本企業(オーリッド社)が提供するOCRクラウドソーシング(KYBER)が印象に残っている。このサービスは中国人が日本語は分からなくても漢字が読めることを利用して日本語の読み取りが成功しているかを中国人にチェックしてもらうという仕組みになっていた。
http://ascii.jp/elem/000/000/635/635625/


本記事に関連して重要なクラウドソーシングの例はInnoCentiveNineSigmaだろう。どちらも研究開発のクラウドソーシング。例えば、依頼者が「以下の条件を満たす新素材。開発期限は○○年×月△日。報酬は100万ドル。」のような依頼をクラウド上に出し、参加者(大学の研究者など)が応募するというもの。これらのサービスはオープンイノベーションの一種として語られることが多い。例えば、ヘンリー・チェスブロウ著、栗原潔訳『オープンビジネスモデル』(2007)が参考になる。

2.特許調査クラウドソーシングの内容は?

上にあげた例から予想される本記事の特許調査サービスは、例えば、依頼者(またはCrowdIPR)が「以下の特許を無効にする無効資料*2。調査期限は○○年×月△日。報酬は1万ドル。」とクラウド上に依頼を出し、参加者(「世界中のテクノロジと知財関連の専門家450名」)が先行文献を探して応募するというもの。
確か、このようなサービスは以前からあったと思う。名前は思い出せないが。なのでこの企業が先駆者という訳ではないだろうが、このようなクラウドソーシングビジネスが広まっていく傾向にあるのは確かだろう。例えば無効資料調査なんていかにも集合知の活かせそうな分野なので。

オープンビジネスモデル~知財競争時代のイノベーション (Harvard Business School Press)

オープンビジネスモデル~知財競争時代のイノベーション (Harvard Business School Press)

*1:原文記事はcrowdsourced

*2:特許はその基準となる日より古い資料がその特許と同じ技術を開示していると判断されると消滅すると一般に定められている