高橋洋一『これからの日本経済の大問題がすっきり解ける本』

2011年に出版された本を紹介する34冊目。前回紹介した『この経済政策が日本を殺す』に続いて高橋洋一氏。本書も似たような内容の本。高橋氏の著書は、数は多い一方、内容の重複っぷりは半端ない。

高橋洋一『これからの日本経済の大問題がすっきり解ける本』(2011)アスコム ★★★

『この経済政策が日本を殺す』に続いて高橋洋一氏。『この経済政策が日本を殺す』とかなり内容が重複している。大震災後の復興の話がほとんど。主な提案は「増税ではなく国債」と「復旧ではなく復興を」。『この経済政策が日本を殺す』を読めば本書は読む必要はないだろう。

【はじめに】

渡部昇一氏の名前が出てくる。「先生」と呼んでいる。意外なつながり。

増税ではなく国債

日銀法5条但書や課税標準化理論。
金融緩和してもインフレにはならない。供給減少は被災地だけ、需要減少(買い控えなど)は全国的だから。
なぜインフレになる(供給不足)と言いたいのか。増税を正当化できるため。
そういえば、池田信夫氏がやたら「供給不足」と言い始めた。

●金融政策とセットでなければ財政政策に効果はない

マンデル=フレミング・モデルにより、財政政策を行うと高金利となり、円高となるため、財政出動が輸出減少と相殺され効果がない。阪神大震災のときは財政政策のみで金融政策を行わなかったため効果がなかった。阪神大震災後も円高になった。金融政策をセットにすることで金利上昇・円高を抑えることができる。
いつものインフレ目標の話も。

●復旧ではなく復興を

復興を妨げ、復旧に向かわせるのは公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(災害負担法)。改正すべき。
復興のための組織・制度(復興院)は東北州を先取りしたものにすべき。
復興は公共事業なので、赤字国債ではなく建設国債で行うのが当然。

●東電の賠償スキーム

現在検討されているスキームは国民から取り上げたカネで東電の債権者・株主を救うもの。東電のバランスシートを見ると資産13兆円に対して、(株主)資本が2.5兆円、負債が10兆円。しかし負債のうち5兆円は担保なし。この5兆円のうち電力事業を継続するのに必要なものは1.4兆円。よってこれ以外の3.6兆円と株主資本2.5兆円は賠償の原資にすべき。
送発電を分離すれば、送発電事業の裏にいる自然と株主・債権者の整理になる。

【その他】

ジョージ・スティグラーの規制の虜理論や後藤新平高橋是清OECDの大震災後の対日審査報告書などいつもの話。それ以外では次の記述。

現在の政権がすぐ終わるとしても、その後継はやはり財務省の息のかかった野田佳彦財務相や[・・・]がなる可能性が高い。(p.46)

復興構想会議の初回の挨拶で議長の五百旗頭真氏は増税について述べた。会議を仕切る財務省の御用学者になっているということ。