高橋洋一『官愚の国』

2011年に出版された本を紹介する36冊目。前回紹介した『高橋教授の経済超入門』に続いて高橋洋一氏。本書は『さらば財務省!』(2008)から延々と出し続けている官僚批判本の一冊。氏の官僚批判本はどれも似たようなものだが、本書は特に重複が激しく新しい内容はほとんどない。が、書いてあること自体は悪くない。まあ、同じ氏の官僚批判本なら本書より『さらば財務省!』や新刊では『財務省が隠す650兆円の国民資産』(2011)の方が読む価値はある。そう考えると本書の出番はないな。

官愚の国

官愚の国

高橋洋一『官愚の国』(2011)詳伝社 ★★★

いつもの高橋洋一氏。本書は原点に戻って官僚批判の本。内容はこれまでのこの手の本とほとんど同じ。内容が重複しすぎてメモすることがほとんどない。ただ本の内容自体は悪くないので、氏の官僚批判を読んだことない人にはいいかもしれない。高橋氏の本でもっとも読む価値があるのは官僚批判だろうから。


以下、簡単に内容のメモ。

●なぜ財務省は強いのか

第一に、予算・人事・国家公務員の全体数を握っているため。人事というのは人事院に出向しているため。全体数というのは総務省に出向しているため実際は財務省

以上から財務省天下り用の特殊法人の予算・人事・全体数をも握っているといえる。よって特殊法人を作るのに財務省の協力が必ず必要。よって財務省はどの特殊法人にも天下りポストをもっている
第二に、国税庁という警察力をもっているため。

●産業政策批判

産業政策には意味がなかった。高度経済成長期においても。例えば竹内弘高氏(一橋大)や三輪芳朗氏(東京大)の研究成果。

【参照文献】

小宮隆太郎・奥野正寛・鈴村興太郎『日本の産業政策』 ※高橋氏は本書に<産業政策には意味があった>と書いてあると批判しているが、山形浩生氏は<産業政策には意味がなかった>と書いてある本だと正反対のことを言っているんだが。
山本七平『「空気」の研究』
城山三郎『男子の本懐』『官僚たちの夏
大森彌『行政学叢書4 官のシステム』 ※東大出版会行政学シリーズ。以前のエントリで同シリーズの山口二郎『内閣制度』(2007)を紹介した。