「嫌なら見るな」では済まない:ダブルスタンダードなので
現実
韓国関連に偏った放送をしているとして問題になっているフジテレビ騒動だが、テレビ側から「嫌なら見るな」という主張が出てきて、「電波は公共性があるから『嫌なら見るな』では済まない」という反論がなされている。
抽象
ここで「電波の公共性」とは何なのかということだが、電波は国有財産ということだろう。その国有財産の利用料としてテレビ局は市場価格より安い価格しか払っていない。市場価格とは具体的には電波オークションでの価格だろう。この差額が池田信夫氏が以前から言っている電波利権だ。この差額はテレビ局への補助金のようなもの。国の補助金はもちろん税金なのでテレビ局に対しては税金で補助しているようなものだ。なので、テレビ局に怒っている人たちは「この税金泥棒!」と言っていると考えればいいだろう。
結論として「『嫌なら見るな』では済まない」という反論は正しいと考えられる。
このような論争の根本的な原因は何か。
自分が考えているのは、公と私のダブルスタンダードということだ。ここでのダブルスタンダードの意味は、両立不可能な基準の適用を機会主義的に主張することだ。
抽象と現実
テレビ局のダブルスタンダードとは何か。
テレビ局は電波の利用においては、自らの公的な基準の適用を主張し、国からの補助金(電波利権)を正当化しようとする。一方、テレビ局は通常の企業活動においては、一般の私企業(実際にそうなのだが)として行動し、利益の最大化を図っている。
この利益最大化の行動が批判されている。具体的には、フジテレビが安価な番組を韓国から買ってきて、自らが著作権等を有するコンテンツなどの商品を番組内で宣伝するということだ。
一般にダブルスタンダードは批判され、それを擁護するのは理論的にも難しいと思われる。例えば、いわゆるグローバリズム批判にもダブルスタンダード批判がある。グローバリズムとはグローバル化を利用したアメリカの国家戦略。このような批判をしている論者としてジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大)がいる。
このダブルスタンダードを解消すればこの問題は根本的に消滅するだろう。
一つはテレビ局を完全に私企業にしてしまえばよい。電波を自腹で買って、買った電波の範囲で好きなだけ宣伝すればよい。その代わり電波利権を手放して国からの補助金は受け取るな。電波オークションはテレビ局を私企業にする制度といえる。例えば、ニュージーランドなど経済的自由を重視する政策の一つとして行われたことからも分かる。ニュージーランドでの電波オークション設計に携わったのがジョン・マクミラン(1951-2007)。その著書『市場を創る』というタイトルどおり、電波オークションは電波を市場化するでテレビ局を私企業にする制度といえる。
もう一つは完全に公企業にすること。NHKということだ。ただ日本だけで二つも国営放送は要らないと思われるので、やはり私企業にするのがいいだろう。
なお、同様の公と私のダブルスタンダードは電力会社にも見られる。
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