フランス著作権法の二次創作規定とは何か?韓国のフェアユース規定は米韓FTAの帰結か?

1.フランス著作権法の二次創作規定とは何か?

ニコ生『TPPはネットと著作権をどう変えようとしているのか!?』のまとめを見ていたら、福井健策氏(弁護士)が次のようにつぶやいていた。

日本はフランスのような二次創作規定も、米国のようなフェアユースも(本格的規定の導入予定も)ない国です。
http://togetter.com/li/211110

「二次創作規定って何?」と思ったので調べてみた。調べた結果は「どうもパロディ規定のことを言っているんじゃないか」というもの。パロディ規定とはフランス著作権法の122の5条4号。同条柱書に次のようにある。

著作物が公表された場合には、著作者は、次の各号に掲げることを禁止することができない。
http://www.cric.or.jp/gaikoku/france/france_c1.html (著作権情報センター)

122の5条は2号に私的複製があったりして、権利制限の規定。その4号にこうある。

もじり、模作及び風刺画。ただし、当該分野のきまりを考慮する。
http://www.cric.or.jp/gaikoku/france/france_c1.html

伊奈波朋子氏(弁護士)の論文にフランスの判例が示したパロディの要件らしきものが書いてある。

既存の著作物を、辛らつな言葉や面白おかしくすることにより変形すること。
http://www.itlaw.jp/DCAJ-TI.pdf

これを読むとどうも同人誌とはあまり関係がなさそうだが。パロディはフランスに特徴的な文化という気もする。

2.韓国著作権法フェアユース規定は米韓FTAの帰結か?

もうひとつ気になった福井氏の発言がこれ。「『TPPで同人誌は消えるのか?』シンポジウムで激論」という記事より。

アメリカが唯一、輸出したくないのがフェアユースなんですよ。
http://news.livedoor.com/article/detail/6005202/

フェアユース輸出したくないのだろうか?調べてみると、張睿暎氏(早稲田大学助手)のコラムにこうあった。

韓国では「公正利用」と訳されているフェアユース著作権法に導入しようという内容の著作権法改正案が議員発案として提出されたのである。[…]このような早い足取りは、2007年米国と締結したFTAの影響も大きい
http://www.21coe-win-cls.org/rclip/activity/index57.html (早大)

本当にアメリカは他国がフェアユースを導入するのを嫌っているのか疑問だ。
ちなみに韓国で提出されている法案の規定は次のようなものだそうだ。

第35条の2(著作物の公正利用)
(1) 第23条から35条までに規定された場合以外にも、著作物の通常の利用方法と衝突せず、著作者の合法的な利益を不合理に害しない特定の場合には、著作物を利用できる。
(2) 著作物利用行為が第1項による利用行為であるか否かは次の各号を考慮しなければならない。
1. 営利または非営利など利用の目的および方法
2. 著作物の種類および性格
3. 著作物の中の利用された部分が著作物全体で占める分量および比重
4. 著作物の利用が著作物の現在または将来の市場や価値に及ぼす影響
http://www.21coe-win-cls.org/rclip/activity/index57.html

韓国著作権法は23条〜35条が権利制限の規定だそうで、その最後に一般条項を挿入する。内容はアメリカの規定とほぼ同じだろう。


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