松岡正剛『アートな言葉』

2011年に出版された本を紹介する28冊目。昨日の『リスクな言葉』に続いて松岡正剛氏の本を。昨日のエントリーに書き逃したが、松岡氏の日本文化論については私がまだ手をつけていないので(未読なので)、それらの本はこのブログでは紹介の対象にはなっていない。

松岡正剛 アートな言葉 (セイゴオ語録)

松岡正剛 アートな言葉 (セイゴオ語録)

松岡正剛『アートな言葉』(2011)求龍堂 ★★

『リスクな言葉』の続編。本書はタイトルどおり芸術論。松岡氏は昔から芸術についてよく語っているので『リスクな言葉』とは違い広い時期の言葉が選ばれている。ほとんどが特定の芸術家(の作品)について言及した言葉だが、その芸術家の作品が分かっていないと読んでもよく分からない。本書の言葉自体は抜き出された短いものなので、その芸術家についての説明はない。自分も芸術家の名前くらいは知っているが作品までは知らないという場合が多く、よく分からなかった。読者をかなり選ぶ本だろう。実質的な評価は難しい形式的な評価としては読者を選びすぎるので良い本とは思えない。


以下、内容のメモ。

カルチャーにサブもメインもない。価値観や思想などを表現してみることが、すべてメディア化です。(p.184)


「あとがき」の現代美術批判はまったく同感。

ぼくが気になる現代美術は、たいてい近代との格闘ないしは葛藤が根差しているということであってほしいのに、それがどえらく少なくなってしまっている。べつだん近代批判をするばかりなのが能なのではない。[・・・]今日の時代社会が拠って来たる起点とのそれなりの交錯を示しておいてほしいのだ。(p.225)

日本の現代美術の第一人者である村上隆氏が『芸術企業論』で「欧米で芸術作品を作成する上での不文律は『作品を通して世界芸術史での文脈を作ること』」と述べていたが、これが近代との格闘か否かという点が気になる。

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