小松正之『日本の鯨食文化』
2011年に出版された本を紹介する31冊目。昨日の『海は誰のものか』に続いて小松正之氏。小松氏はもともと捕鯨問題に関する国際的な交渉の日本側の中心人物として有名になった人だ。なのでクジラ関係の著書がかなり多い。本書はその最新の一冊といえる。小松氏はひたすら「捕鯨を続けたい・再開したい」と主張し続けているわけだが、そもそもクジラを捕っても日本国内で需要がないと困るわけだ。そこで日本の鯨肉の食文化を紹介して需要を喚起するために書かれたのが本書と言える。
日本の鯨食文化――世界に誇るべき“究極の創意工夫”(祥伝社新書233)
- 作者: 小松正之
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2011/06/02
- メディア: 新書
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小松正之『日本の鯨食文化』(2011)祥伝社 ★★
いつもの小松正之氏。新刊が出ていたので読んだ。本書の執筆の動機は、「鯨肉を食べたことのない日本人が増えておりこのままではマズい」という小松氏の危機感だろう。よって本書は鯨肉の需要を喚起する目的で書かれていると言える。そのためにタイトルどおり「日本の鯨食文化」を紹介している。やはり文化を残したいという個人的な想いがあるようだ。
まあ、その想いはいいし、その想いを実現するために本を書くのもいいのだが、いかんせん内容がイマイチだ。グルメガイドに近いものがある。
どうも「日本の鯨食文化」という立派なお題目を支える論拠に乏しい感じがする。そもそも鯨肉以外だっていろいろと廃れて食べられなくなった日本食はいろいろあるだろう。なぜ鯨食文化だけ水産庁がカネを出して守らないといけないのかという疑問がわく。本書はこの疑問に答える論拠を示せていない気がする。
本書の大まかな構成は江戸時代の鯨食文化・捕鯨史(第1章)、昭和・平成の鯨食文化(第2章)、日本各地の鯨料理の紹介(第3章)。第3章は『江戸東京湾 くじらと散歩』のようなガイドブック的内容。各地の鯨料理店を紹介している。
もうひとつ本書で特徴的なのは、小松氏が退官した後の水産庁に対する抗議だ。日本は2010年6月のIWCで南氷洋における調査捕鯨の撤退を自ら表明したようで、それに対して憤りを見せている。当然だが。他にも鯨研に「もっと鯨肉を国民にセールスしろ」とか発破をかけている。
●鯨肉の価格はどう決まるか?
調査捕鯨のコストを加味して政府が決定し、築地などの市場に卸す。
●調査捕鯨は実質的には商業捕鯨か?
調査捕鯨が「需要と供給の関係を調整し、少ない供給量で限られた人びとに高い値段で売りつづけ[る]」(p.140)手段だと認めているような記載がある。そして「それじゃダメだ。大量に供給して価格を下げて鯨食文化を保護しろ」と水産庁に文句を言っている。
【その他】
人間はなぜ、他人や社会のために働こうとするのか。それは公共奉仕が、人生に生きがいを感じさせ、幸福感を与えてくれるからだ(p.235)
まあ、ありきたりだし、「なに言ってんの?」って感じだが、実際働き出すと、このありきたりな問題がアクチュアルな問題にならざるをえない。自分が<全体性>への信仰と呼ぶ問題。
元祖くじら屋は鯨のから揚げ(竜田揚げ)がおいしい。
へぇ。渋谷のかなり目立つ場所にある店だが、まだ行ったことがない。
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