経済(学)

吉川洋『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』

昨日のエントリで紹介した本書の読書メモを載せておこうと思う。 吉川洋『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』(2009)ダイヤモンド社 ★★★★ 本書はダイヤモンド社の広報誌での連載を基にしたもの。タイトルどおり、ケインズとシュンペーターの比較を…

ケインズとシュンペーター

以前のエントリでケインズとガルブレイスは消費者主権という点で交錯するがそこはリベラリズムの難問ということを書いた。 今回はジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946)とヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(1883-1950)について両者はニーチェ的動機(シュ…

ケインズとガルブレイス

今回はジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946)とジョン・ケネス・ガルブレイス(1908-2006)は消費者主権という点で交錯するが、そこはリベラリズムの難問だという話。 ガルブレイスの経済学は制度派経済学と言われるが、それ以前にケインジアン。ガルブレイ…

「失われた20年」の原因は何か?:需要から考える

高度成長(1955〜70)の原因は内需拡大だった。例えば、自動車・家電(「三種の神器」)。 高度成長の終了後(70年代以降)は、需要が飽和し、成長は輸出主導となった。 しかし、プラザ合意(1985)で輸出主導は難しくなり、内需拡大が必要になった。 そこで道を誤っ…

東電 実質国有化へ:賠償スキームと送発電分離案

毎日新聞より。http://mainichi.jp/select/biz/news/20111208k0000m020114000c.html 東電:実質国有化へ 政府、公的資本1兆円注入 政府は、東京電力に少なくとも総額1兆円規模の公的資本を注入する方向で調整に入った。福島第1原発の事故対応費用の増加な…

なぜ日本の漁業(水産業)はダメなのか?

日本の第一次産業シリーズ第3回。前回、前々回と八田達夫・高田眞『日本の農林水産業』(2010)(読書メモ)を基に日本の農業・林業の問題点について書いた。今回も同様に同書に基づき漁業の問題点について書いてみる。 ●日本の漁業の現状 日本は1972-1988年にかけ…

なぜ日本の林業はダメなのか?

前回は八田達夫・高田眞『日本の農林水産業』(2010)(読書メモ)を基に農業について書いた。今回も同様にこの本を基に林業について考えてみる。自分は林業について読んだ本はこれが初めて。まったく馴染みのない分野だったので新鮮で参考になった。日本の林業に…

なぜ日本の農業はダメなのか?

今回はこの問いについて八田達夫・高田眞『日本の農林水産業』(2010)(読書メモ)を基に考えてみる。この本には日本の農業・林業・漁業の問題点と解決策が書かれている。日本の農業・林業・漁業はどれもろくでもない状況に陥っているが3業種に共通の問題がある一方…

ロジャー・ミラー、ダニエル・ベンジャミン、ダグラス・ノース著、赤羽隆夫訳『経済学で現代社会を読む[改訂新版]』

以前のエントリで参照したという命題について述べた次の著書の読書メモを載せておく。 ロジャー・ミラー、ダニエル・ベンジャミン、ダグラス・ノース著、赤羽隆夫訳『経済学で現代社会を読む[改訂新版]』(2009)日本経済新聞社 ★★★★ 『制度・制度変化・経済…

TPP問題:「広く弱い利害」をもつ集団から「狭く強い利害」をもつ集団に利益が移転される

TPPについての議論が盛んだが、条約の内容がハッキリしないのでよく分からない。具体的にはよく分からないので、今回は一般的に問題を見る視点として役に立つ命題を紹介したい。 それは政治的決定によって「広く弱い利害」をもつ集団から「狭く強い利害」を…

TPP著作権問題:日本側の目標は「知財強化」その背景にはポリシーロンダリング

1.TPPにおける日本側の目標は何か 福井健策氏(弁護士)のつぶやきをまとめた記事。 「TPPで日本の著作権は米国化するのか〜保護期間延長、非親告罪化、法定損害賠償」 http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20111031_487650.html もとのつぶ…

IMF資本規制を容認:ダブルスタンダード解消につながるので望ましい

読売新聞にも記事があるが、より詳しいウォールストリートジャーナルより。http://jp.wsj.com/Economy/Global-Economy/node_217019 【ワシントン】国際通貨基金(IMF)は5日、新興市場国が国際資本流入に対する規制措置を導入することを70年間のIMFの…

ゼンショー「経営を度外視してまで防犯に取り組む必要があるのか」はもっともだが、社会の相互依存性を理解していない

読売新聞より。 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111013-OYT1T00613.htm2ちゃんまとめサイト経由で知った。 http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1669886.html 警察庁が指導、「すき家」ゼンショーの経営姿勢 警察庁は12日、「すき家」の…

新制度論・新制度学派とは何か?

このブログで新制度論という言葉を何度か使ってきた(こことかここ)。また新制度論という言葉を使わなくとも新制度論に基づいてニュースを分析したエントリが多かった(こことかここ)。今回はこの新制度論について書いてみたい。 ●「新制度論」と「新制度学派…

マイケル・サンデル著、小林正弥監訳『民主政の不満(下)』

以前のエントリで上巻の読書メモを載せたので、ついでに下巻も載せておく。本書を読んで分かるのはアメリカ史を通じて共和主義(≒コミュニタリアニズム)とリベラリズムの争いが続いていたこと。そしてどの局面でもリベラリズムが勝利したこと。 マイケル・サ…

都が企業への「備蓄条例」検討:アクター・均衡・制度・制度変化

現実と抽象 珍しく石原氏がマトモなことを言っている。 台風が直撃しているのに帰宅しようと人びとがターミナル駅に殺到するのはおなじみの囚人のジレンマだ。帰宅する人はそれぞれ帰宅時間をずらした方が、全員にとって高い効用が得られることは分かってい…

東電賠償請求書に経産相「あぜん」:取引コスト・官僚制・トレードオフ

現実と抽象 この事例は契約の不完備性にともなう取引費用の典型的な事例という印象を受ける。あとは東電の官僚体質が繁文縟礼*1につながっているのだろう。これはというマックス・ウェーバーの議論から。 ノーベル経済学賞受賞者のロナルド・コース(シカゴ大…

「円高阻止」空振り:囚人のジレンマ

産経新聞より。http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110910/fnc11091023250007-n1.htm 「円高阻止」空振り 日本は蚊帳の外 2011.9.10 23:24 【マルセイユ(フランス)=田辺裕晶】G7で日本は、歴史的な円高阻止のため欧米各国に協力を訴えた。だが、協…

スイス中央銀行と日銀:コミットメントとウェイトアンドシー

ブルームバーグより。 http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920020&sid=a.MRvB9AjT54 9月6日(ブルームバーグ):スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は6日、スイス・フランの対ユーロ相場に上限を設定すると発表した。上限設定は30年余りで初め…

ポール・クルーグマン著、山岡洋一訳『良い経済学 悪い経済学』

時事通信より。http://www.jiji.com/jc/c?g=obt_30&k=2011082200280 山岡 洋一氏(やまおか・よういち=翻訳家)20日午前0時4分、心筋梗塞のため横浜市の病院で死去、62歳。神奈川県出身。葬儀は27日午前10時から同市緑区長津田5125の1の横浜…